株式会社わもん屋わたふ わたふブログ

わもんなわたふ(54)

わもんなわたふ(54)

わたふとよしこの黒帯チャレンジ。

あやちんと、本日初めて黒帯に参加したピースが見守る。

わたふ、よしこ、あやちん、ピース。

話し手、馬、羽織。

代わる代わる役割を交代しながらチャレンジしていた。

チャレンジして、シェアして、またチャレンジしてシェアして。

いけそうでいけない。

できそうでできない。

しばらくして、やぶちゃんが言う。

「ここは――4人連続取得や!」

「えっ!?」

あやちんとピースが目と口を開いた。

場の空気が変わった。

わたふが黒帯を取得する日と誰もが思っていた。

わたふに黒帯を取ってもらおうと誰もが思っていた。

わたふ自身もそう思っていた。

そこに、よしこが加わり、ピースとあやちんが加わり――、

 ――結局は、参加者全員で黒帯取得を目指すことになった。

それまでも、わたふをはじめ、みんな真剣だった。

手を抜いていた者はいない。

それでもさらに、越えることができる。

他人事が自分事になり、自分事が他人事になる。

自分が黒帯を取得することが、他の人の黒帯取得を後押しする。

この場にいた全員の思いが、一カ所に集まった。

羽織は話し手に集中する。

話し手は今の思いを振り絞り話す。

馬は羽織の音を聞きながらも話し手の音に集中する。

わたふも集中する。

今、ここで、自分は何をすべきか。

話し手のとき、馬のとき、それらを観察するとき。

今、ここで、感じたことを感じたままに。

羽織のときも同じ。

今、ここ、自分に集中する。

そして――、

「わたふ、認定!!」

やぶちゃんの声が聞こえた。

 

わもんなわたふ(53)

――黒帯を取る意味がわからない。

よしことわたふの様子を察知してか、

やぶちゃんが2人の前に座った。

まずはよしこの話をやぶちゃんが聞く。

その後わたふの話をやぶちゃんが聞く。

時折やぶちゃんが話を整理していく。

やぶちゃんはファシリテーターのようなことをしていた。

わたふは何を話していたか覚えていない。

よしことわたふが交互に話をした。何度か話をしたとき、ふいによしこが言った。

「なるほど。仕事に役立つんね」

よしこが納得した音を出したとき、

わたふも納得した。

内容は覚えていないが。

黒帯を取る意味はわからない。

しかし、これからよりよく生きていくために、

わもんが必要であるという予感は間違いなくある。

そして今日、黒帯を取れる予感もわたふにはある。

やぶちゃんが言う。

「これで、まずわたふが黒帯を取る! 

そして次によしこが取る!」

「えっ!?」

よしこは目を開いた。

今日黒帯を取るという意識がなかったためだ。

「わたふとよしこ。黒帯2人連続取得や!」

そして黒帯初段へのチャレンジがはじまった。。。

 

 

わもんなわたふ(52)

 

2012年7月7日土曜日、第37回心徒塾。

先月6月の心徒塾で、

くろちゃんが黒帯を取った。

次はわたふの番である。

今日は黒帯を取れそうな気がする。

 

しかし――。

「わたしね、まだね、黒帯を取る意味がわからんのよ」

よしこがわたふに言った。

わたふの風よけとして、

まずはくろちゃんが黒帯を取る。

そしてわたふが取って、

後ろからよしこが黒帯を取る。

わたふは8月までに黒帯を取ればいいのだが、

今の流れからは今日か明日に取れるだろう。

そしてその後は10月に博多で「わもん屋わたふ」の襲名披露と白帯心徒塾を開催し、

それから九州で白帯心徒塾を開催していく。

流れはできているのだが、

黒帯を取る意味については、

わたふもよくわかっていなかった。

 

 

 

 

わもんなわたふ(51)

2012年6月10日、

 

くろちゃんが黒帯を取得した。

 

二人羽織わもんが導入されてから初めての黒帯認定だった。

わたふは8月までに黒帯をとればいいのだが、

次回7月の心徒塾で黒帯がとれるような気がしてきた。

今まで、やぶちゃん以外誰も二人羽織ができなかった。

しかし、

今回くろちゃんができた。

こんな話を聞いたことがある。

ガラスケースにノミを入れて蓋をする。

本来ならばノミはガラスケースを跳び越えるジャンプ力があるのだが、

蓋をされているため跳んでも跳んでも蓋に当たってそれ以上跳び出せない。

何度か試すが、跳び出せないとわかると、

蓋に当たらないくらいまでしか跳ばなくなる。

そうなった後では、蓋を外したとしても、

ガラスケースを跳び出そうとはしなくなるという話だ。

そんなノミのジャンプ力を元に戻す方法がある。

それは、蓋があったことを知らない、

ガラスケースを跳び越えるジャンプ力を持つノミを同じガラスケースに入れることだ。

跳ぶことをあきらめたノミは、

蓋がないことに気づいたとき、

また以前と同じように跳ぶことができるようになるらしい。

わたふだけでなく、

他の人も、

これまで二人羽織について「やぶちゃんだから、できる」という認識があった。

しかし今回、く

ろちゃんが二人羽織をやったのだ。

 

くろちゃんが跳んだことで、みんなが「私も跳べるかも」と思いはじめた。

 

 

  
 

わもんなわたふ(50)

 

ぴ~ひゃらぴ~ひゃら♪ 

タン♪ タン♪ タン♪

ぴ~ひゃらぴ~ひゃら♪ 

タン♪ タン♪ タン♪

 

 

話し手よしこ、聞き手ツネちゃん。

それ以外は全員、

二人羽織をしているくろちゃんを見つめている会場で、

突然 電子音が流れてきた。

しかも、

くろちゃんの方向から。。。

おそらく、

くろちゃんの胸ポケットから・・・⁈

携帯電話の着信音だった。

だれも何もできず、

心の中で 「気にするな!」

と祈った。

 

 

「くろちゃん、気にするな!!」

 

 

やぶちゃんの声が飛ぶ。

 

くろちゃんは携帯電話の音を振り切るように、

聞き手の後ろから音を入れ続ける。

話し手に、聞き手に、完全に集中した。

電話の音を振り払って、

話し手の音に集中し、

聞き手に音を入れ続ける。

そして――、

「黒帯、認定!!」

やぶちゃんが、叫んだ。

 

 

 

わもんなわたふ(49)

黒帯2日目の終了時間が迫ってきた。

――時間的にもおそらくこれが最後のチャレンジになるだろう。

わたふは時計を見てそう思った。

くろちゃんの二人羽織わもんへのチャレンジである。

話し手はよしこ、

聞き手(馬)はツネちゃん。

そして羽織くろちゃん。

二人羽織は順調に始まった。

よしこは普通に話せている。

ツネちゃんも普通に聞けている。

くろちゃんも的確な指示を出していた。

 

 

しかし――、

 

順調なままだった。

 

――悪くはない。

ただ、

このままだとこれ以上深い話にはならない。

 

 

わたふをはじめとして、

周りの仲間は口出しできない。

しようにも何をどうすればいいのかもわからない。

くろちゃんもこの状況に気づいているだろうから、

くろちゃんならばこの状況を打開する何かができると信じるだけである。

 

その思いが通じたのか、あるいは――。

 

想定外の音が心徒塾の会場を包んだ。。

 

 

わもんなわたふ(48)

 
京都での心徒塾2日目の午後、

二人羽織わもんへの挑戦がはじまった。

わたふをはじめとする他の参加者もチャレンジするのだが、

この日は徹底的にくろちゃんシフトである。

 

いや、この日だけではない。

 

くろちゃんが、

わたふの風よけになると決めた日から、

この流れは決まっていた。

昨日の心徒塾から今日も、

やぶちゃんの場づくりもくろちゃんシフトである。

 

各々ができることをした。

 

自分が羽織ったときには

「こうしたらいいかもしれない」

「あそこでもう少し音を出せばよかった」

など気づきをシェアする。

話し手になったときは話し手として話しやすかったかどうか、

聞き手(馬)になったときには羽織られてみてどうだったか、

など、

自分の気づきがだれかの気づきにつながることを意識していた。

わたふもできることを、

できるだけした。

 

しかし、

まだ、

二人羽織に成功する者はいなかった。。

 

 

わもんなわたふ(47)

 

6月、京都での心徒塾。

1日目の土曜日、

くろちゃんはこの場にはいない。

土曜日は仕事のため、

くろちゃんは毎回日曜日だけの参加だった。

 

だからこそ、期待が高まる。

わたふは明日来るくろちゃんのために何ができるのかを考えていた。

自分のためでもあるが、
人のために何ができるのか。

そのことがわたふを楽にした。

自分のためではなく人のために動くことが気持ちの面で楽であることを知った。

そして2日目、

くろちゃんが参加。

今月にも、

二人羽織で初の黒帯が誕生するかもしれない。

くろちゃんにもプレッシャーがかかっているのだろうが、

くろちゃんもわたふのためという目的があ

った。

自分がしようとすることが、人がしてもらいたいことでもある。

自分がしてもらいたいことが、人がしようとすることでもある。

 

わたふは「離我」を体感しつつあった。

 

 

 

わもんなわたふ(47)

 

やぶちゃんから電話があったあと、

よしこからも電話があった。

 

「あんたのおかげで、わたしも黒帯とることになったんよ」

 

やぶちゃんは既によしこにも連絡をしていたようだ。

 

くろちゃんと同じく、

よしこも明るい声だった。

わたふは、

一人ではなかったことをあらためて思う。

今まで一人で走ってきた。

後ろを振り向かず前だけを見て、

 

やぶちゃんを、

わもんを追いかけていた。

しかしまだ追いつけない。

 

走っても
走っても

 

近づくことができないように感じていた。

それでも走っていれば到達することはできるという思いはあった。

 

まずは最初の目標地点である黒帯の取得もできるとは思っていた。

しかし期限がある。

今年8月までに黒帯を取らなければならない。

到達することはできると思っていたが、

8月までに到達できるかどうかがわからなかった。

 

 

歩くことも考えた。

休むことも考えた。

 

一度止まって、文句を言った。

そして周りを見渡すと、一緒に走っていた仲間がいた。

 

 

わもんなわたふ(46)

「くろちゃんにかわるね」

 

電話口のやぶちゃんがそういって、

 

くろちゃんが話しはじめた。

 

「そういうことになりました」

 

くろちゃんの明るい声が聞こえた。

 

くろちゃんが続ける。

 

「ぼくが先に黒帯を取って風よけになります。

よくよく考えたら、

わたふさんの1年前から心徒塾に参加していて、

なんで先に黒帯を取るのがぼくではなく、

わたふさんなんだと思っていたんですよ」

 

そういってくろちゃんは笑った。

やぶちゃんから言われたことなのか、

くろちゃんから言い出したことなのかはわからない。

 

しかし、

 

くろちゃんが先に黒帯を取ってくれるということは、

どんな理由や事情があったにせよ、

わたふにとってうれしいこと以外に何もなかった。

話し手がやぶちゃんにかわった。

 

「そういうわけで、

まずくろちゃんが7月までに黒帯を取る。

そしてそのあと、

わたふが取る。

さらにわたふに追い風を吹かすように、

後ろからよしこが黒帯を取る」

 

わたふにはやぶちゃんのドヤ顔が見えた。

 

 

わもんなわたふ(45)

「くろちゃんが風よけになってくれる」

その言葉を聞いたとき、

わたふは初めてプレッシャーを感じていたことに気がついた。

 

もう少し詳しくいうと、

プレッシャーを感じていることは気がついてはいたが、

自分がプレッシャーにつぶされようとしていた状況に気がついた。

8月までに何としても黒帯を取らなければならない。

しかしまだ先が見えない。。。

打つ手はすべて打ってきたつもりだが、

それでもなんとかしなければという焦り。

 

打つ手がもう何もないにもかもしれないのに絞り出さなければならない辛さ。

 

そういったことを何となく感じてはいたのだ

が、

感じていることを抑えようとしていた。

自分自身がプレッシャーをつくっていた。

だから、

くろちゃんが先に黒帯を取ってくれるということを聞いたときに感じたのは、

安心感であった。

 

 

自分は一人ではなかったということを感じた。。

 

 

わもんなわたふ(44)

2012年6月初旬、

朝7時ごろ、

わたふの携帯電話が鳴った。

 

表示には『薮原秀樹』とある。

しばらく携帯電話を見つめた。

 

しかたなく、出る。。。

 

「わたふか~?」

 

電話からやぶちゃんの声が聞こえた。

 

こんな朝から何の用だと思ったが口には出さない。

 

やぶちゃんは

「マルヒの朝は早い!」

とハイテンションで言った後、

「ええ話があるんや」

と言った。

 

マルヒにはくろちゃんが勤めていた。

やぶちゃんはマルヒに企業コンサルで行っている。

 

「くろちゃんがな、風よけになってくれるって」

 

 

 ――風よけ?

 

「わたふが黒帯をとるのに、プレッシャー、感じとるやろ。だから、くろちゃんが黒帯を先にとるって」

 

。。。

 

 

 

 

わもんなわたふ(43)

その顔がキライ!

とは言ったが、

やぶちゃんと顔を合わせないわけにはいかなかった。

5月の心徒塾の次の日には

長野県の小布施に行く予定である。

もちろん観光ではない。

 

やぶちゃんは小布施について

「わもん発祥の地」と呼んでいた。

 

もともとやぶちゃんは「わもん」のことを「話聞禅」と言っていた。

しかし、「『禅』というのは宗教的な意味合いを含んでしまう。

『禅』を外してはどうか」との提案をうけた。

それがが小布施での行政コンサルのときであった。

また、書籍『わもん』の出版社である文屋があるのも小布施である。

やぶちゃんは月1回、行政コンサルのため小布施へ行っていたので、

わたふもついていくことにしていた。

 

小布施には黒帯ナンバー1番のナカジがいた。

その他にも黒帯ノミネートされた人たちがいて、

二人羽織わもんも浸透していたので、

わたふは二人羽織の練習もすることができた。

一緒に練習できる仲間がいることがありがたかった。

 

 

わもんなわたふ(42)

「もう、言ったもん。
『その顔がキライっ』って!」

 

心徒塾が終わり、

会場のビルを出たところで、

わたふは、

くろちゃんを相手に今朝の状況を再現した。

 

「そして、また聞こえるように言うんよ。

『心徒塾が終わるころには、顔が変わって

る』って。

もう、やかましわっ、って思ったわ」

 

「顔、変わってますよ」

 

と、くろちゃん。

 

「そうなんよ。くやしいけど…」

 

たしかに、わたふは笑顔で話していた。

今回の心徒塾はいつになく楽しかった。

今朝の状況があったからこそなのかもしれない。

内容は覚えていない。

1月から、京都の心徒塾へ行きはじめ、

結局毎月京都に来ている。

心徒塾のメンバーも固定されはじめたようで、

顔なじみが増えてきた。

 

「それでね、今日、心徒塾が終わった後、やぶちゃんがツネちゃんに言ってんのよ。

『ほら、見てみ。顔変わったやろ』って。

また、やかましわっ!、って思った」

 

二人羽織わもんはできず、

黒帯取得の目途は立っていなかったが、

わたふのモチベーションは1日で回復した。。

 

 

 

わもんなわたふ(41)

 

ツネちゃんはわたふに普通に声をかけた。

「何かあったんですか?」

 

「はぁ〜っ⁈」

わたふはこのとき、

この雰囲気に動じない(あるいは、この雰囲気を感じない)ツネちゃんを観測した⁉︎

 

黒帯ミーティングは開催されることなく時間が過ぎ、喫茶店を後にした。

 

心徒塾の会場は同じビルの6階である。

わたふは足早に会場に向かった。

エレベーターを待っていると、

後ろからやぶちゃんの話し声が聞こえた。

「ツネちゃん、よう見ときや」

やぶちゃんは、わたふの耳に届くようにツネちゃんに話しかけた。

「わたふは今あんな状態やけど、心徒塾が終わるころには顔が変わってるで」

 

――やかましわっ!

 

わたふはエレベーターに乗って、閉じるボタンを押した。

 

 

わもんなわたふ(40)

 

これまでいろいろなことがあった。

 

ある朝、目覚めたとき

「わもん」を思い出し、

学びはじめた。

しかし、

8月までに黒帯をとるというプレッシャー、

九州・沖縄を任される責任感などの加圧に耐えきれなくなったのだろうか。

そして、

これからも「わもん」を続けるつもりか。

わたふは何も言えず、

やぶちゃんの顔を見ることもできず、黙っていた。

やぶちゃんも何も言わず、

ただ座っていた。

どれくらいの時間がたったのか、

ツネちゃんがやってきた。

このような雰囲気にツネちゃんを巻き込むのは本意ではない。

しかし、

わたふは顔を上げることができなかった。

ツネちゃんは、

やぶちゃんとわたふを交互に見た。

ただならぬ雰囲気の中でツネちゃんがどうするのか。

顔を上げることはできなかったが、

わたふはツネちゃんに集中した。

 

 

わもんなわたふ(39)

 

「その顔がキライっ!!」

さまざまな思いが混じりあい、

わからなくなってしまった状態で発せられた言葉だった。

目から涙がこぼれるが、

わたふはやぶちゃんの顔に向けた指をおろすことができなかった。

 

やぶちゃんは目をぱちくりさせる。

 

「その目もイヤっ!!」

 

口が勝手に動いた。

 

もう一言付け加えたところで、

指をおろすことができ、

涙をぬぐった。

 

わたふは下を向いた。

――これからどうすればいいのだろうか。。。

 

わもんなわたふ(38)

 

8月までに

黒帯を取ってくれと言われ、

10月に

博多での白帯心徒塾開催と

「わもん屋わたふ」の襲名披露をする

と決められ、

九州を任すと言われ、

その後、

沖縄も追加され、

黒帯になるために二人羽織を見せてほしい

 

と頼めばいきなりやらされ、

行くところすべてついて行っている

 

にもかかわらず何も教えることもなく、

二人羽織をやらせてもらうこともなく、

一人落ち着こうと思っていたのに

 

目の前でホットサンドを食べている。。

 

 

わたふは自分が何をしているのかわからなくなった。

 

やぶちゃんはホットサンドを食べ終え、

ナプキンで口を拭いた。

ナプキンを置き、

顔を上げる。

 

「で、なんや?」

 

その言葉を聞き、

わたふのなかで、

何かがはじけた。

 

やぶちゃんの顔の前に指を突き出す。

 

 

そして――。

 

「その顔がキライっ!!」

 

わたふの目から涙がこぼれた。

 

 

 

 

 

わもんなわたふ(37)

 

そして5月、

 

わたふの焦りはピークに達する。

 

京都での心徒塾が始まる前、

 

黒帯ミーティングが開催されていた。

 

やぶちゃんとツネちゃん、

 

そして黒帯が集まって、

 

心徒塾前にミーティングをする。

 

わたふはまだ黒帯を取っていなかったが、

 

やぶちゃんのいるところに参加することにしていたので、

 

黒帯ミーティングにも参加していた。

 

5月の京都での心徒塾の日、

 

ミーティング前に心を落ち着けておこうと、わたふは早めに出かけた。

 

ミーティング会場は、

 

心徒塾会場のビルの1階にある喫茶店。

 

ミーティングが始まるまで少し時間がある。

 

喫茶店に入り、

 

一人落ち着ける場所に座ろうと店内を見渡すと――、

 

 

――やぶちゃんが、いた。

 

 

一人でゆっくりしようと早めに来たのに、

 

それを見越していたかのようにやぶちゃんがいる。

 

――先手を取られた。

 

わたふはそう思った。

 

無視するわけにもいかず、

 

わたふは席に近づき、やぶちゃんの前に座った。

 

やぶちゃんはホットサンドを食べていた。。。

 

 

わもんなわたふ(36)

 

わたふは、少しずつ焦りはじめた。

二人羽織について、

何となくコツはつかめてきたものの、

自信を持ってできるとは言えず、

実践する機会もない。

やぶちゃんについては行くものの、

見せてくれるわけでもなく、

アドバイスをくれるわけでもない。。。

 

やぶちゃんと会話をすることもなかった。

 

やぶちゃんの観察を続け、

そこで得るものはたくさんあったが、

だからといって二人羽織ができるとは言えなかった。

 

――8月までに黒帯になれるのだろうか。。

 

やぶちゃんの現場について行くことは意味がないことではない。

九州を舞台に板の上に立つときに役に立つことは数多くある。

しかし…

黒帯になるには二人羽織わもんができることが課題である。

 

日が経つにつれ、

焦りが大きくなっていった。。。

 

 

わもんなわたふ(35)

4月の心徒塾あたりから、

二人羽織の聞き手である「馬」について、

ツネちゃんがいるときはツネちゃんと決まった。

 

ツネちゃんは素直で、

羽織が何も言わないと何もしない。

 

言ったこと、

その通りにしか動かない。

 

 

わたふは、

ツネちゃんのことがあまりわからなかった。

 

何に興味があるのか?

どんなことを考えているのか?

わからなかった。

 

心徒塾に来なければ会うことはないタイプで、

今まで会った人とは違う人種だとまで思った。

 

しかし、二人羽織では羽織として、

馬のツネちゃんを羽織らなければならない。

どのような言葉がけでどのように動くのか。

羽織ることはなくともできることはないかと、

ツネちゃんに会ったときは必ず話しかけ、

その反応を確認した。

ツネちゃんの後姿を写真に撮り、

手帳に挟んでいたこともある。

時間があれば手帳を開き、

ツネちゃんの背中を見て、

二人羽織をしているところをイメージし続けた。。。

わもんなわたふ(34)

 

わたふの初の二人羽織は、

何もできないまま終わった。

 

「見るより、やったほうが勉強になるやろ」

 

初めて二人羽織に挑戦し玉砕したわたふに、

 

やぶちゃんが言った。

 

ニタっと笑っていたのかどうかはわからない。

顔を見たくなかった。

 

翌月4月の心徒塾でも

 

二人羽織に挑戦する機会があったものの

 

撃沈。。。

 

それでも最初に挑戦したときよりは

 

何となくコツがつかめた気がした。

 

わたふは、

 

何度も試してみたい、

 

練習したいと思ったが、

 

二人羽織は日常の中で行うことではない。

 

行けるところは

 

やぶちゃんについて行くものの、

 

やぶちゃんは積極的に見せてくれるわけでは

 

ない。。。

 

 

 

わもんなわたふ(33)

わたふ、初めての二人羽織の現場。

戸惑いながらも、聞き手の後ろにつく。

話し手が話しはじめる。

聞き手も聞きはじめる。

 

 

わたふは――、
――何もできなかった。

 

何分たったのだろう。

話し手は普通に話す。

聞き手は普通に聞く。

5分か、10分か。

実際はもっと短かったのかもしれない。

 

聞き手を「馬」とすると、

「馬」の後ろで羽織っているわたふは

「騎手」である。

騎手が何もできないまま、

馬は走っている。

自由に走る馬に、

わたふは乗っているだけだった。

翻弄された。

何もできなかった。

一言も発することができなかった。

 

この光景を見ていたツネちゃんは、

後でこう言った。

 

 

「かわいそうで――、見ていられませんでした」

 

……。。。

 

 

わもんなわたふ(32)

 

海癒には

「やぶちゃんに会いたい」

という女性が来ていて、

 

わもんらしく、

さっそく話を聞くことになった。

 

話し手はその女性。

交替しながら話を聞いていく。

 

――どこかで二人羽織わもんを見ることができるかもしれない。

わたふは、

やぶちゃんが二人羽織わもんをするところを

見逃さないように、

話を聞いている風景とともに

やぶちゃんの動きにも注意していた。

 

たからちゃんが聞き手になった。

そして、やぶちゃんが動いた。

――来た!!

初めての二人羽織の現場が来たことを

直感し

わたふはやぶちゃんの動きに集中した。

 

やぶちゃんから言葉がでる。。。

 

「わたふ、羽織り!」

 

わたふの初めての二人羽織の現場が来た。。

 

わもんなわたふ(31)

 

話には聞いているが 

 

わたふは

二人羽織わもんをまだ見たことがなかった。

 

「やっているのを、見せてほしいと思います」

 
わたふは運転中のやぶちゃんに言った。

「見たらできるんやな」

 

そんなことはわからない。

 

しかし、見てみないことにはできる気がしない。

 

「まずは見ることからスタートだと思います」

 

やぶちゃんは「わかった」と応えた。

 

海癒に向かう車中で、

 

わたふは

「二人羽織を見せてほしい」

とお願いしたが、

さすがに車中では二人羽織をすることはなく、

そこで二人羽織わもんについての会話は終わった。

車は土佐清水市に入り、海癒に到着する。

 

 

海癒でのわもん合宿が始まった。。。

 

 

わもんなわたふ(30)

 

2012年3月下旬、

 

わたふは車の助手席に座っていた。

 

『海癒(かいゆ)』というところで

 

「わもん合宿」があるという。

 

場所は高知県土佐清水市。

 

高知市から車で向かった。

 

やぶちゃんはじめ、

ツネちゃんやたからちゃんなど、

合宿に行くメンバーが乗り合わせている。

やぶちゃんが運転しているとき、

助手席にわたふがいた。

 

3月の心徒塾後しばらくして、

 

黒帯の認定条件が「二人羽織わもん」

 

になったという臨時ニュースが入ってきた。

 

ツネちゃんはじめ、

 

黒帯ノミネートの人たちが

 

二人羽織わもんに挑戦して、

 

撃沈したという話も聞いた。

 

 

わもんなわたふ(29)

 

おっと、ここで臨時ニュースが入りました!

 

現場と中継がつながっております!

 

現場のさのともさーん‼︎

 

「はい。こちら、現場のさのともです。

調査を続けていくと意外な事実が判明しまし

た」

 

意外な事実とは何ですか?

 

「実はですね、

『わもんなわたふ』に書かれている内容と、

実際の記録に齟齬があるんです」

 

その齟齬とは?

 

「はい。『わもんなわたふ』では、

2012年3月の心徒塾で二人羽織わもんが誕生

したように書かれているのですが、

実は3月の心徒塾では二人羽織わもんが

まだ誕生していなかったようなんです」

 

続けてください⁉︎

 

「独自の調査によりますと、

心徒塾の開催日は3月3日と3月4日。

二人羽織わもんが黒帯認定基準となったのは

3月の心徒塾より後。

3月12日のわもん塾大阪終了後に

認定基準となった可能性があります」

 

わたふさんが九州を任されたというのは

いつになるのでしょうか?

 

「プライベートわもんは3月3日でした。

つまり、3月3日に心徒塾1日目。

それが終わってプライベートわもん。

翌日、心徒塾2日目。

そして3月12日に二人羽織わもん誕生という

流れです」

 

そうなんですね⁈

 

それによって今後の影響はあるのでしょうか?

 

「ないと思います。

 

以上、さのともがお伝えいたしました」

 

 

 ・・・。

 

失礼いたしました。。。

 

以上、臨時ニュースをお伝えいたしました。

 

 

わもんなわたふ(28)

 

当時はまだ

 

「黒帯心徒塾」ではなく、

 

「心徒塾」だった。

 

 

しかしこの頃から

 

「白帯心徒塾」のことを

 

「白帯」、

 

「心徒塾」のことを

 

「黒帯」と呼ぶようになっていた。

 

 

8月までに黒帯を取得し、

 

10月にはコラボで白帯、

 

そしてその先は九州で黒帯。

 

 

黒帯が開催できるようになるために、

 

もっと聞く力がほしい。

 

もっと場づくりの現場が見たい。

 

 

月1回2日間の京都の心徒塾だけでは

 

間に合わない。

 

 

わたふは、

 

やぶちゃんの行くところ全てに

 

付いていくことを決めた。。。

 

 

 

わもんなわたふ(27)

 

――毒を食らわば皿まで。

 

 

わたふがそう思ったかどうかはわからない。

 

しかし、わたふは行くことを決めた。

かといって、

 

「九州、任すわ」

 

の意味がわかったわけではない。

 

 

なぜ、やぶちゃんがわたふに

 

「九州、任すわ」

 

と言ったのかはわからない。

 

 

自動ドアの先に

 

 

何があるのかも

 

 

わからない。

 

ただ、流れからいくと――。

 

 

――九州で黒帯をしろ、

 

 

ということか。。。

 

 

 

わもんなわたふ(26)

 

『わもん屋わたふ』の屋号が決まり、

 

8月までには黒帯となり、

 

10月にはやぶちゃんが博多に来て

コラボで白帯心徒塾を開催する。

 

その際あわせて

『わもん屋わたふ』の襲名披露。

 

おまけに「九州、任すわ」。

 

 

わたふの自動ドアは次々と開いていった。

 

 

ドアが開いたとしても、

 

 

そのドアをくぐらなければならないことはない。

 

行くか行かないかは決めることができる。

 

わもんの門を叩いたのは

 

わたふ自身である。。。

 

 

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